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「図書館という場を生かす」~“出会い”と“コミュニケーションのきっかけ”づくり~京都市醍醐中央図書館


京都市醍醐中央図書館(以下、醍醐中央図書館)は、「パセオ・ダイゴロー」の西館4階にあります。「パセオ・ダイゴロー」の地下には、地下鉄東西線「醍醐駅」があり、交通アクセスは抜群です。醍醐中央図書館は、京都市では初めてビデオテープやCD等の視聴覚資料が視聴できる画期的な図書館として、平成9年(1997年)の4月にオープンしました。一昨年、開館20周年を迎えました。

醍醐中央図書館は、京都市内にある4つの中央図書館の1つであり、醍醐をはじめとする京都市東南部地域の中核的な図書館として、図書約23万冊、視聴覚資料約2万点という豊かな蔵書、資料を備えています。現在、33名(アルバイトを含む)の職員の方が働いています。

「少子高齢化」「人口減少」という大きな社会の変化の中で、図書館の姿も、大きく変わろうとしています。現在、醍醐中央図書館がどのようなことに力を入れておられるのか、そしてこれからどのような取組みを行っていかれるのかについて図書課長の山内卓さんにお話をお聞きしました。以下、いろいろな図書館の取組みについて、ご紹介したいと思います。

これまでの図書館の取組み

京都市の図書館では平成28年度より、赤ちゃんと保護者の方に絵本を通して心ふれあうひとときを届ける活動「ブックスタート」を行っています。具体的には、8カ月健診で本を1冊プレゼントして、読書の記録簿として「〇〇さんの本の手帳」を配布しています。

醍醐中央図書館では、毎月第2水曜日に「あかちゃんといっしょ~絵本の会~」を講義室で行っています。各保育所と連携し、その時に随時「育児相談」も行っているそうです。また、毎月2回行っている「おたのしみ会」(絵本の読み聞かせなど)も人気です。

醍醐支所子どもはぐくみ室が、年3回行っている「プレママパパ&赤ちゃん教室」において、図書館職員が絵本の読み聞かせを行っており、行政機関とも連携しています。

このように醍醐中央図書館は、乳幼児や子育て世代に向けての取組みに力を入れています。

また、平成27年度から「武田総合病院」の「オレンジカフェ」(認知症予防カフェ)に醍醐図書館と一緒に定期的に参加しています。具体的には、昔の教科書を読んだり、図書館から持参した郷土の本を見て参加者が出身地の和菓子の話をし懐かしい思い出を語り合ったり、手遊びとして「あやとり」を一緒にやったりというふうに、すべてが五感を刺激するプログラムになっています。「あやとり」については、図書館職員が参加者の方からやり方を教えてもらうことが多かったそうです。

図書館に来ることができない高齢者へのアプローチ

急速な高齢社会の進展に伴い、醍醐中央図書館は、「武田総合病院」での「オレンジカフェ」の実施に加えて、図書館に来ることができない高齢者の方への取組みをさらに推進しています。それは、2~3年前から年1回、図書館職員が「ツクイ山科勧修寺デイサービス」を訪問している取組みです。30~40分の五感を使う内容で、体も頭も使う「対話型」のプログラムとなっています。先般行われたプログラムは、以下の内容です。

①紙芝居②「声に出して読みたい日本語」(斎藤孝著)から「草枕」(夏目漱石著)の音読③昔の暮らしを振り返る。風呂敷についての図書館の本を参考にして実際に風呂敷包み体験④昭和歌謡(美空ひばり「真赤な太陽」)を図書館のCDを使って一緒に歌う。

このような、図書館ならではの専門的な取組みが今、地域で必要とされている、求められているのではないかと思います。

中高生は図書館に行かない?利用しない?

今、若者の本ばなれが顕著であるといわれています。山内課長は「小学校の2~3年生まではよく図書館に来るんですが、中高生になるとなかなか来なくなるんですよ。」とおっしゃいます。「ティーンズ」と呼ばれる中学生と高校生に向けて、醍醐中央図書館は、それぞれの取組みを行っています。

中学生については「チャレンジ体験」(職場体験実習)の受け入れを行っており、昨年は9校(京都市内および山科・醍醐地域)を受け入れたそうです。「チャレンジ体験」は、3~4日間体験してもらっており、バックヤードの仕事、例えば、各図書館から一日2回送られてくる本のメール便の受け入れ(他館から届いた予約本や返却本の荷さばき作業など)や本を館内の配架棚に並べる前の下準備などを行ってもらっているとのことです。

「チャレンジ体験では、読み聞かせについて本の選び方からその方法を図書館の司書が教えています。中学生には図書館で子どもたちに向けて実際に読み聞かせをやってもらっているんですよ。」と山内課長。

高校生については、以下のアプローチを行っています。

「以前から東稜高校の福祉系のコースで年1回2時間の授業を担当しています。子どもたちへの読み聞かせについて、一から司書が教えて、高校生に実演してもらっています。また、その授業とは別に高校の図書館を見学させていただいて、担当されている司書の方や高校生の図書委員の方と話をする機会をもちました。その時、わかったことは双方が抱えている問題、悩みは共通している、同じだということでした。」と山内課長はおっしゃいます。

7月27日(土)の午後、醍醐中央図書館の講義室で「図書館でボードゲーム」というイベントが予定されています。若い人の間で人気の「ボードゲーム」を、図書館で行うことにより、日頃図書館に来ない中高生に、図書館に来てもらって楽しんでもらおうとする新しい試みです。

醍醐にある図書館の役割

醍醐に図書館があることの意義について、山内課長は次のようにお話しされます。

「地域の資料を集めることが、醍醐にある図書館の1つの役割だと思っています。歴史的な経緯や地理的な関係から醍醐地域ばかりではなく、山科や宇治市の資料を集めて、コーナーを設けています。資料は書籍ばかりではなく、地域のことを紹介しているリーフレットも含みます。醍醐支所が作成した「醍醐へGO!」という地図も配架しています。」

「地元である醍醐・山科地域のことが掲載されている新聞記事のスクラップの配架を行っています。地域の図書館として、その必要性を感じて1年半ほど前からはじめました。現在、地域コーナーに赤いファイルが5冊置いてありますので、是非、ご覧になっていただきたいと思います。」

また、醍醐中央図書館では昨年の9月から、地域の方々が学ぶことのできる場として“醍醐味講座”という連続講座を講義室で開催しています。昨年は、テーマを変えて、3回の講座を開催しました。今年は6月から来年の3月まで4回の講座が予定されています。

「昨年から新しくスタートさせた“醍醐味講座”ですが、これまで図書館に来られていなかった方々が来られるようになったと感じています。講座のテーマによっては、これから社会に出てマスコミ関係の仕事をしたいというような大学生も参加しています。定員50名ですが、人気があり、会場に入りきれないこともあります。」と山内課長。

「文情 生若春水」という言葉

本の貸し出しや返却の受付を行うカウンターを通り左に進むと、調査や相談を行っているカウンターがあります。そのカウンター越しに壁を見ると上の方に「扁額」がかかっていることに気がつきます。そこには「文情 生若春水」と書かれています。山内課長に読み方と意味について教えていただきました。

「この言葉は、醍醐寺の座主の方が書かれたもので“文情生まれること春水のごとし”と読みます。“本に書かれていることは、汲めども尽きぬ雪解け水のように非常に味わい深いものである”という意味だそうです。」

「だれにでもやさしい開かれた図書館」を目指している図書館が、社会の変化とともに、その姿、役割が変わってきていることを、醍醐中央図書館の様々な取組みを通して実感しました。社会が変化するからこそ、逆に、豊富な蔵書と司書という専門家を備える“知の一大施設”の図書館の強みがさらに生かせるのではないかと思います。

最後に、私たち自身が子どもの時の「知りたい!」という本能のような気持ちや好奇心を持ち続け、それを生かす努力や営みを、年を重ねながら磨き、膨らませていくことが大切であると感じました。

 

京都市醍醐中央図書館

〒601-1375

京都市伏見区醍醐高畑町30-1パセオ・ダイゴロー西館4階

(地下鉄東西線「醍醐駅」1番出口)

TEL075-575-2584

平日9:30~20:30(児童だけの利用は17:00まで)

土日祝日9:30~17:00(7・8月の土曜日は19:00まで)

休館日毎週火曜日(火曜日が祝日の時はその翌平日)、年末年始


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